最近の研究事情

2004年3月20日 研究
旅行から帰ってきて、では、研究をしようかなと思い、コンピュータの前に座ってみたのですが、3時間ほどで頭が痛くなってきました。
1週間ほどコンピュータの前から離れて、改まって座ってみるとコンピュータの前に居るのって結構きついなぁと素朴に感じます。

まぁ、もう慣れましたが。

さてさて、まぁ、いろいろしなきゃいけないことがあるのですが、とりあえず、確率論的シミュレーションアルゴリズムの実装のために論文読んでます。

やっぱり、前提となる知識が少ないと、論文を読むという作業はとたんに難しくなります。Tau leapの論文を読むのにかれこれ5時間ほどかかっていますが、まだ頭のなかでアルゴリズムがまとまりません。簡単な論理の飛躍が迫えなかったり、前提となる公式がわからなかったりします。

困った、困った。

まぁ、この辺の穴を埋めるところからスタートしなきゃいけないわけですね。

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このTau leapの基となるGillespie法は僕がこの1年ほど前から研究に使用しているアルゴリズムです。まぁ、詳細は省くとして、このアルゴリズムはじつは生体内シミュレーションの研究に用いるのには問題のあるアルゴリズムです。

その第一の理由は、やはり状態の均一仮定にからむことでしょう。
Gillespie法は化学系から発展してきたアルゴリズムであり、これを生体内反応、特に遺伝子発現のシミュレーションに使うようになってきたのは結構最近です。
で、現在このGillespie法でシミュレーションを行っている遺伝子発現というものはむちゃくちゃ場所の制限を受けます。数少ないDNAがそこに存在しなければ絶対に反応は起きないし、くっついたり、離れたりする反応も絶対数が少ないかつ、場所が固定されているため、場所的要因を考えないと正確にはシミュレーションできません。

一応、シミュレーションではそれらの場所的要因も含めた見かけ上の(遺伝子発現のシミュレーションの最高頻出単語のようです。)パラメータを使用しているという理論が一般的な回避方法ですが、まぁ、これも怪しいもので、なにより見かけ上にしちゃったらGillespieで確かめたい確率的な影響がきちんと再現されないじゃんという批判が当然発生します。

まぁ、しかし、現実的にこれより効率がよく、使いやすいシミュレーションアルゴリズムはとりあえず存在しないので、みんなGillespieを使用しているのですが、このGIllespie法を前提とし、ノイズの理論を整理した新しい遺伝子発現ノイズをシミュレーションするための式が登場しました。

それが、ついこのまえNatureにでた、

Paulsson J.
Summing up the noise in gene networks.
Nature. 2004 Jan 29;427(6973):415-8.
PMID: 14749823

です。

これはいままでGillespieで便宜的に再現していた遺伝子発現のノイズをきちんと発生源を理論的に考えて再現しようという式です。まぁ、理論自体はマルコフ過程に基づくものなので、対してかわりませんが、実験との連携がかなり強固に行えます。

で、この論文自体、とってもおもしろいのですが、なにより、驚くべきことは、その論文発表形式です。

articleでもreviewでもありません。analysisです。

最初見たときポカーンですよ。

なんだろう、この形式。
最初に式が書いてあって、あとはこの式の説明を書き、最後にこの式が今までの実験を以下に効率よく説明できるかが書いてあります。

うわー、すげーなー。俺が今まで考えていたノイズの捉え方よりもかなり洗練されています。こういう論文の出し方もあるんだー、と勉強になりました。

まぁ、それだけです。

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最近、この遺伝子発現のノイズという分野はかなり故意的に盛り上げられた分野だなということを感じます。それについては、また今度。(忘れるかも)

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