ISBN:4091874312 コミック 浦沢 直樹 小学館 2004/09/30 ¥550

これはめちゃくちゃおもしろい。
鉄腕アトムを浦沢直樹に料理させたら、ここまでしちゃいました的な作品ですが、なんかこう手塚治虫が明るく描いていた鉄腕アトムがじつはこんな重いテーマを背負っていたことを見せつけられる作品です。(まぁ、もともと原作も暗いところはおもいっきり暗いけど。)とりあえず一巻の終わりくらいにアトムが登場するんだけどアトムはこんな感じか〜という驚きだけでも読む価値があります。

アトムはどんな兵器を装備しているのかが、もっかの関心事項です。いきなりすごい兵器に変身したらどうしよう。
「僕の好きな人たちに皆そろって幸せになってほしい。それぞれの願いを叶えてほしい。温かい場所で、あるいは涼しい場所で、とにかく心地よい場所で、それぞれの好きな人たちに囲まれて楽しく暮らしてほしい。最大の幸福が空から皆に降り注ぐといい。僕は世界中の全ての人たちが好きだ。」(本文より)

好き好き大好き超愛してる。を読んだ。久しぶりの舞城王太郎作品だったのでちょっと緊張した。読み終わった後、好き好き大好き超愛してる。もloveloveloveUIloveU.もなかなかすてきな題名だと思った。

って、小学生の感想か。まぁ、でもそんなもんです。
Nさんに勧められて読んだ本なのだが、これは傑作。

とくに青春小説としては、最高ランク。
あと、ミステリー小説の名作みたいな扱いになってるが、これはあまりミステリー小説として読まないほうがいいかと思う。

基本的には、高校生である主人公の心の機微を描いた青春小説である。しかも、高校生でありながら、主人公の考えがなんとなく自分に近いものを感じ、読んでいる最中、ずっと自分ならどうするかを考えながら読んでいた。

読んだ後は、2時間ほど、ひたすら最後の場面が頭の中をぐるぐる回っていた。しかも舞台が湘南なので、主人公が通った道なども完璧な映像として浮かんでくる。

結局、その日寝たのは午前4時でした。

ーーー以下、ネタばれーーー

とりあえず、高校生だという前提があるのでしょうがないのだが、犯罪計画に穴が多すぎる。ふつうならそれで興ざめしてしまうのだが、この小説ではあまりにも主人公に感情移入してしまうため、頼むからもうすこしばれないようにしてくれとはらはらどきどきしながら読んでいた。この辺は作者の思うつぼである。

で、さっさくだが、ここでこの小説で行われた完全犯罪について考えてみたい。

車の免許があったら、やはり、死体を発見されないようにし、失踪にしてしまうというのがもっとも効果的だと思う。実際に日本には捜索願いがでるが、行方不明となってしまうことが年に数千件あるらしい。その中の1割が犯罪だとしたら、年間100人はそうやって殺されていることになってしまう、、、本当かな?

犯罪はそもそもその犯罪が行われたかもしれないということを警察が感知した時点で完全犯罪ではなくなる。だが、高校生という立場ではさすがに車の調達はが不可能だろうという点を考慮したうえで、自分ならどうするかを考えてみる。

基本的に、俺もこの小説のような状況になったら、確実にその男を殺すと思う。よって、殺さないという安全な選択肢はないものとする。

で、殺し方なのだが、俺はここで主人公が初期に考えた正当防衛案が結局もっともリーズナブルだと思う。というより、死体を隠せない以上、正当防衛のような、殺しても罪に問われない名目で殺すしかない。どんなに用意周到でも検死官を欺くというのはかなりリスクの高い賭だ。

母親、妹の証言は明らかに自分に有利に働くだろうし、弁護士も協力的だ。なにより、うまいことしたら計画性のなさを立証できるのが大きい。犯罪は衝動的なものなのか、計画的なものなのかで罪の重さが全く変わってくるので、万が一、過剰防衛となってもおそらく未成年なので3年ほどででてくるだろう。常に高いストレス下にあったことが証明できれば、さらに罪は軽くなると思われる。

その時、もっとも重要なのは、妹と母親には少なくとも、正当防衛で殺したと思わせるだけの演技力だ。あと、返り討ちにあって殺されないだけの体力。結局、この二つが備わっていなければならないので、なかなか厳しい気がするが、しかし、そのほかの選択肢はないような気がする。とりあえず、密室トリックのようなことは警察は動機から迫るから意味がないし。

しかし、過剰防衛って、マスコミに報道されるのかな?これは要サーベイである。過剰防衛という犯罪が報道されてしまう可能性があると、この作戦は使えなくなってしまう。

、、、なんて、ことをうだうだと考えながら読んでいました。

できたら、最後のオチのその後も書いてほしかったけど、それは蛇足というものなのだろうか。でもやっぱり書いてほしいと思った。
うちの兄貴もWebに書いてますが、これはおもしろいです。

この漫画は産業革命下のイギリスでの一人のメイドのおはなしですが、これがなんか静かな描写で淡々と進むのに、読ませるところは読ませ、感動させるところは感動させというなかなか漫画としての機微を抑えた作品です。

漫画というメディアに期待することは人それぞれですが、この漫画はふつうの作品ではなかなかふれることのできない琴線を少しだけタッチしてきます。まぁ、テーマとしてはありきたりなんですが、時代考証、この設定に作者の愛情がにじみ出ており、読んでいて気持ちいいです。

おすすめです。
そういえば、結構前ですが、『4TEEN』も読みました。

129回直木賞は俺の中では、これと伊坂幸太郎の『重力ピエロ』一騎打ちみたいなものでしたが、なぜか友人Kの大好きな村山由佳が受賞していました。村山由佳は読んだことないのでなんともいえまんせんが、まぁ、Kが好きということはおもしろいんじゃないでしょうか>投げやり

で、この4TEENですがやはりおもしろいです。まぁ、ジャンルがおれの好きな青春ものということもあるのですが、短編で、このくらい読ませる作者もなかなかいないと思います。

まぁ、いつも通り、読後感の爽やかな後に引かない小説ですが、そんなところが気に入ってるわけです。
最近、そういえばあんまり本読んでないなぁ、と思いBOOK OFFに行って何冊か本を買ってきました。

そのなかの一冊がこの石田衣良の「娼年」だったわけですが、これがかなりの傑作でした。

俺が自分で認識している、自分の好きな本のテーマとして、
1,おしゃれな犯罪もの
2,青年の成長もの
3,ミステリの構造を逸脱したミステリ
とかあるんですが、この本は2の青年の成長ものに属しています。ていうか石田衣良がよくこのテーマで本を書くんで、結果的に石田衣良の作品はよく読むんですが、この「娼年」という作品も期待にそぐわずおもしろかったです。

この本のテーマは女性の欲望と主人公の成長です。主人公はcall boyになって、20代から70代までいろいろな女の人に買われていきます。その課程で、人間の欲望の多様性にふれ、成長していく、みたいな話なんですが、まぁ、これがなかなかよかったです。

俺の青春小説ランキングでもかなり上位に入りました。以前から絶賛していた「世界は密室でできている」とかには及びませんが、いいです。かなり短い小説ですから2時間くらいで読めちゃいます。

この辺の過剰すぎない演出もじつはポイント高かったりします。

最近、あまりにもごてごてしたいるものが読みづらくなってきました。「虚無への供物」とかを喜々として呼んでいたころ(高校生)が懐かしいです。

あと、この作品の中でいろいろなプレイが登場するのですが、もしこのプレイをすべて石田衣良が経験したことあるかと思うと、ガクガクブルブルです。まさかね。
今日も案の定、筋トレをした後は、暇だったので、「波のうえの魔術師」という本の文庫本を読みました。

前回の直木賞をとった石田衣良は、前々から秋葉原をネタにした小説を書いてみたりとちょっと気になっていたので、手頃なサイズの文庫を見つけて読んでみました。
たぶん、世の奥様方にはワイドのコメンテータしてる方が有名かもしれませんが、この本読んでちょっとコメンテータしてる理由もわかりました。

ストーリー的には、市場の株取引の達人の老人からフリータの若者がレクチャーを受け、株取引の世界にはまっていくという話なんですが、この人の経済というものの捉え方がおれと同じだったので、まずびっくりしました。

日経新聞のCMで「あれもこれもみーんな経済」というキャッチフレーズがありましたが、あの言葉は正確には、「あれもこれもみーんな経済ということにしようよ」というニュアンスなんだと思います。経済という枠組みがどのように社会に組み込まれているかを理解するにはもってこいの本です。かなり一から教えてくれます。

この中で印象的だった言葉といえば、主人公にたいして彼女がいった、

「わたしはこんな台詞、くだらないテレビドラマだけだとおもってた。でもいうよ。わたしを取るか、マーケットを取るかはっきりしてほしいの」

という台詞です。こんな陳腐な台詞を確信犯的に使い回しているあたりが、たぶんこの人の小説の本質に近いのかなと思いました。乱暴な話にすれば、こういう表現を小説内で使うか使わないかというのはかなり小説において大きな要素なのです。(俺の中では)

あと、株取引の入門書的な意味では、おそらく最高かつ最悪なものなので、興味のある人は読んでみるといいかもしれません。

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あと、一応参考までに、俺がいつも見てる経済に関係のあるblogといえば、

田中宇の国際情勢ウェブログ http://tanakanews.com/blog/
週間!木村剛 http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/

とかでしょうか。
ニュースサイトは有名どころを読んでるだけですが、上の二つはおすすめです。